A ready-made demo tape

淡々とした日記

20190616

夫、引き続き仕事が終わらない。午後にようやく休みらしい機運になり、Mont Salèveに向かう。家を出てから、バス停を間違えていたことに気づき、さらに一応国境を越えるのでパスポートとユーロの現金もあったほうがよくないかと思い当たり、もう一度家に戻ったりしてどんどん時間が過ぎてしまい、行く前に意気消沈してしまったが、この季節の良いところは 日照時間がめちゃくちゃ長いので午後の遅い時間に出発してもリカバリーがかなり効くところ。バスの終点に着いたのが14時45分とかそんなんでも太陽は傾くどころか十分ギラギラ。山の上へ向かうロープウェイ乗り場に向かって大勢の人が歩いて行く。

(バスの中に大きなハスキー犬が乗っていて、犬がちょっと動くたびに犬の毛が車内に舞い上がった。この街の人は動物にかなり寛容そうなのだが、さすがに多くの乗客があからさまに服をはたいていた。バスは蛇腹でつながっている二両連結で、このハスキー犬ともう一匹別の犬がバスに乗っていたが、乗車時にだいぶお互いにワンワン威嚇し合っていて、車内でトラブルにならないようにか、飼い主はそれぞれ前の車両と後ろの車両に分かれて乗っていた。こういうのもマナーの一環なのだろうか)

 

Mont Salèveは岩肌がところどころ露出指していて、山の形もよくフリーハンドで描いてしまうようななだらかな形ではなくて、もっとごつごつした、あまり日本では見ないような、なんというか、目立つけどからっとした雰囲気。ロープウェイを降りて振り返るとすぐにLac Lémanとその周りに広がる街並みがばっと目に飛び込んできた。湖の西端の都会然とした家並みと、きらきらした水面とボート、むくむくの緑、空。

空については、普通に街中にいてもなお、ただただ広いと思う。湖のそばや橋の上にいるときは勿論のこと、ホテルや集合住宅、オフィスビルもたいした高さのものはないので、開放感が途切れることがない。空が広いと感じるだけで肩凝りが治りそうな気さえする。

レストランやコンクリートの展望台があるところから少し下ると、ふかふかした草の茂った緩やかな斜面に行き当たり、帰りのロープウェイに乗るまでほとんどそこでゴロゴロして、遠方の風景の中に今住んでいるマンションや夫の勤め先が見えないか目をこらしたり(目視で間違いなく確認できたのは噴水と白い観覧車と、サッカースタジアムが限界だった)、パラグライダーに興じる人がその斜面から飛び立つのを眺めたり、ビールを飲んだりした。飛行機が離陸するのも何度も見た(先週の遊覧船は、着陸するやつばかり見えたが今日は着陸するのはよく見えなかったので不思議)。

景色を見ているだけなのに飽きることがないのがすごい、周りで同じようにピクニックしている人も子供以外は基本走り回るわけでもなく静かにくつろいでいた。パラグライダーがうまく離陸するとちょっと拍手が起きた。

目に入るものをすべて忘れたくなくて、居ても立ってもいられないような気持ちになるし、一方で、この先大して成り上がることもないだろうが、景色(の記憶)だけは自分のものだ、と思って妙に安心したりもする。

帰宅してからまたキャベツと豚肉と春雨の炒め物を作って食べた。

 

追記:わざわざ取りに帰ったパスポートは出番なし。バスの終点の停留所の名前は「税関」という意味らしかったし、バスを降りてしばらく歩いていると高速道路の料金所みたいなのがあって、パスポート見せろと言われるとしたらここだなという感じがしたが、日曜だったせいか誰もいなかった。EU圏内の空港のimmigrationで押されるスタンプには飛行機のイラストが入っているが、徒歩で通過した場合どんなアイコンになるのだろうか・・・